大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和31年(あ)3799号 判決

本籍

長崎県島原市一一四四番地

住居

島原市中町八〇六番地

クリーニング業手伝

早稲田幸治

昭和八年三月一日生

右に対する強盗、強盗殺人、同未遂被告事件について、昭和三一年九月二八日福岡高等裁判所の言渡した判決に対し被告人および原審弁護人長崎祐三から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人長崎祐三の上告趣意第一点は、違憲をいうが、現行刑法の死刑が、憲法九条、三六条違反と認められないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)一一九号、同二三年三月一二日大法廷判決、集二巻三号一九一一頁、昭和二四年新(れ)三三五号、同二六年四月一八日大法廷判決、集五巻五号九二三頁、昭和二六年(れ)二五一八号、同三〇年四月六日大法廷判決、集九巻四号六六三頁)。それ故、所論は採るを得ない。

同第二点は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人米津稜威雄の上告趣意第一点の一は、違憲をいうがその実質は単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、原判決は、死刑を選択刑として規定している刑法二四〇条後段の適用を挙示して被告人を死刑に処した第一審判決の量刑につき、これを不当とする事由を発見し得ない旨を判示しており、所論控訴趣意に対しては、死刑は違憲でない旨の判断を示したものに外ならないと解することができる。昭和二二年(れ)三四一号、同二三年一二月二二日大法廷判決、集二巻一四号一八四五頁参照)

同第一点の二は、違憲をいうが、論旨の採ることを得ないことは、弁護人長崎祐三の上告趣意第一点につき述べたところと同様である。

同第二点の一、二は判例違反をいうが、原審の是認した第一審判決の確定した事実によると、本件は被告人が甲を脅迫して金員を強取した後、さらに乙外二名を脅迫して金品を強取しようとした際、乙を殺害し、外二名を殺害しようとしたが、その目的を遂げなかつたというのであつて、所論引用の判例とは事実関係を異にしているのであるから、右判例は本件に適切でなく、同第二点の三は、判例違反をいうが、原審の是認した第一審判決挙示の証拠によれば、原判決二の判示は正当であつて、所論経験則違反は認められず、同第二点の四は、判例違反をいうが、引用の判例は本件に適切でなく、右論旨はいずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人本人の上告趣意は事実誤認、単なる訴訟法違反、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても所論の点につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて、刑訴四一四条、三九六条、一八一条一項但書により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

検察官 橋本乾三公判期日出席

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫)

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